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新卒一括採用と日本の企業文化

2017年06月06日 12時12分47秒 | 経営
新卒一括採用と日本の企業文化
 安倍政権の「働き方改革」、特に「同一労働・同一賃金を実現すべき」という考え方を進めていくとこんなことになりそう」という意味で、前回、欧米主要国の「若年層失業率」を見ました。

 幸いにも日本は主要国の中でも最低の若年層失業率を維持していますが、その原因の最大のものは、日本の雇用慣行でしょう。ここではそのあたりの光を当て、何が違うから結果が大きく違うのかを考えてみましょう。

 先ず、いろいろと批判もある「新卒一括採用」という慣行を、どうしても改められない日本企業、それに引き換え、「必要な時に必要な技能を持つ人を採用する」という欧米の採用慣行の違いを見てみます。

 日本の採用慣行の背後にあるのは、「必要な技能を持つ人間」を採用するのではなく「素材としての人間」を採用する」という考え方です。
 言い換えれば、欧米流では「即戦力」を採用するのですが、日本流は、「よい素材を採用してわが社で磨く」のです。

 この点は、日本の社会・文化が本来「人間中心」で、欧米の「職務中心」とは基本が違うからです。特に、今日のような、技術革新などで職務の内容はどんどん変わるという時代になると、最後は「人間力の勝負」で、そこに「 人間中心経営」の強さがあります。

 結果は、欧米では、限られた「即戦力」を持つ人の取り合いになりますが、日本では、「わが社で磨くことで即戦力者の絶対量が社会全体で増える」ことになります。わが社にも有利ですし、もし途中でやめても、訓練の成果は残り、社会全体の底上げになります。

 欧米社会(企業)がインターンシップを重視するのはその代替物としてですが、どうもそれでは不十分のようです。
 日本の大卒の新卒採用は、3年で3割辞めると言われますが、再雇用時にも、前職の経験は評価の対象になります。就職氷河期で、きちんと定職に就けなかった方たちの悲劇が言われるのも、そうした背景があるからです。

 企業は、初任給が安いとはいえ、採用してすぐペイする働きをしてもらえるとは思っていません。1年、2年、3年して、ペイラインに乗る働きをしてもらえると考え、当初は、社会人としてのオリエンテーション、仕事をすることの基礎・基本を教えるのに給料を払うという事を甘んじてやっている事になります。

 この企業努力が、日本の格別に低い若年層失業率を生み出しているという事でしょう。社会人人生の出発点で躓くことは、その後の社会人生活に大きな影響を与えます。

 就職協定の在り方やリクルートルックの行き過ぎ、さらには、就活が学業の邪魔になるなどといった点から新卒一括採用を批判する方もおられるようですが、就職協定自体、かつて日経連が廃止を宣言したこともありますし、検討の余地はあるでしょう。

 しかし、本質は「企業も学校もなぜ新卒一括採用をやめられないのか」という点を日本社会・日本文化との関連で考えてみることがより大事なことのように思われます。

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